大本命のレースで何が起きたのか
2026年の北九州マラソン。
当日は晴天に恵まれ、気温は10度から17度まで上昇。私にとっては少し暑さを感じる場面もありましたが、絶好のマラソン日和となりました。
私はスタートのSブロックに整列していました。
このレースは、私にとって「大本命」の一戦。サブエガ(2時間50分切り)という高い壁を突破するための、いわば集大成となる勝負レースでした。
心は高ぶり、体調も決して悪くはありません。しかし、どこか「ベストではない」という微かな違和感を抱えたまま、号砲の時を迎えました。
結果は、2時間55分28秒。
数字だけを見れば、決して悪いタイムではないかもしれません。しかし、私の心に満足感はありませんでした。なぜなら、あの瞬間、私は「自分の身体の声」を完全に無視してしまっていたからです。
【前半】ペーサー集団への執着
今回の戦略はシンプルでした。
「設定されたペーサー集団に、とにかく食らいついていく」
5km地点、20分19秒。
ここで予定通り集団に合流しましたが、すでに心拍数は160を超えていました。「少し高いな」という自覚はありましたが、作戦を完遂するために必死についていきました。
北九州マラソンの前半は下り基調ということもあり、ペーサーはキロ3分50秒前後のラップを刻んでいき、今の自分にとっては完全なオーバーペースでした。
10km地点、40分8秒。
アドレナリンの影響か、高い心拍数の割には「まだいける」という錯覚に陥っていました。集団走の恩恵を感じつつも、心の奥底ではそのペース設定に言いようのない違和感を覚えていました。
【中盤】「余裕の欠落」に気づかないまま
枝光から戸畑にかけてのアップダウン。ここが前半の山場です。
上り坂で少し集団から離されそうになり、「ここで遅れてはいけない」と無理にペースを上げて追いかけました。
• 15km地点: 1時間00分17秒
• 20km地点: 1時間20分29秒
小倉駅付近では、家族や知人からたくさんの温かい声援をもらいました。気持ちはポジティブになり、ハーフ通過は1時間24分54秒。
タイム上は「サブエガ、ギリギリ」のラインです。「ここまで来たら、もう引き返せない。ペーサーを信じて突き進むしかない」と、自分に言い聞かせていました。
25km地点、1時間40分39秒。
徐々に疲労が顔を出し始めました。脚の違和感というよりは、「身体から力が抜けていくような感覚」です。この感覚を軽視したことが、後半の悲劇に繋がりました。
【後半】自分の身体の声との断絶
30km地点、2時間00分40秒。
ついにペーサー集団との距離が開き始めました。
体感としては、必死に頑張らなければキロ4分を維持できない状態。
その時心強いラン友さんが現れ、声をかけながら引っ張ってくださいました。そのおかげで、35km地点(2時間20分43秒)まではなんとか粘ることができました。本当に、感謝の言葉しかありません。
しかし、35kmを過ぎた瞬間、糸が切れたように身体から力が失われました。何度も足が止まり、それと同時に「もう無理だ」と気持ちまでもが折れてしまったのです。
40km地点、2時間45分6秒。
「サブエガに届かない」という悔しさが全身を包みました。情けなさと絶望感から完全にネガティブな思考ループに陥り、沿道からの熱い応援にも、まともに応えることができませんでした。
そのまま、重い足取りでゴール。記録は2時間55分28秒でした。
失敗の理由は、驚くほどシンプルだった
レース後、一人で静かに振り返りました。なぜ、あんなに崩れてしまったのか。
その答えは、「2時間50分切り」という数字に執着するあまり、最も大切な「自分の身体の声」を無視してしまったこと。
今回の失敗要因を整理すると、以下の通りです。
• 「絶対切る」という強い執着が、走りの余裕を奪った
• 前半、心拍数オーバーを自覚しながらペーサーに無理についていった
• 致命傷になる前に、ペースを落として立て直す勇気が持てなかった
• スタミナ型の自分なのに、前半の貯金(借金)を恐れすぎた
• そもそも、その日の自分にとっての設定ペースに無理があった
これらはすべて、「その瞬間の自分」を見ようとせず、「タイムという数字」に無理やり自分を合わせようとした結果でした。
「その日のコンディション」を走る大切さ
過去に良いタイムで走れた時のことを思い返すと、共通点がありました。
それは、「その日のコンディション」を探りながら走れていた時です。
筋肉の状態、天候、心の準備。それらすべてを客観的に受け入れ、「今の自分にとって最適なペース」をレース中に見つけることができていました。
目標を持つことは、素晴らしいことです。
タイムを追い求めることも、ランナーとしての醍醐味でしょう。
しかし、数字に自分を合わせるのではなく、今の自分に数字(タイム)を合わせる感覚。
これを忘れてはいけないと痛感しました。
今回の北九州マラソンで学んだのは、テクニカルな走り方ではありません。
「もっと自分の身体を信じ、対話することの大切さ」
次のレースでは、今回の教訓を胸に、自分の感覚を信じてスタートラインに立ちたいと思います。それが、次なる「本当の勝利」に繋がると信じて。
北九州マラソン2026 完走
記録: 2時間55分28秒
目標: 未達成。しかし、得られたものは目標以上に大きなものでした。


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